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建築家フェルナンド・メニスのデザインによる「島を守る」エッセンシャル・サービス・ビル

The future Edificios de Servicios Esenciales (Essential Services Buildings) of the Canary Islands are designed by the Spanish architect Fernando Menis. Image © Fernando Menis

カナリア諸島政府は、自然災害や気候変動、パンデミック、サイバー攻撃やテロなどへの対応能力を高めるため、最高レベルのセキュリティ機能を備えたビルの新設を計画しました。このたび新設される2棟のビルの設計公募を勝ち抜いたのは建築家フェルナンド・メニスです。エッセンシャル・サービス・ビル(以下、ESEビル)がテネリフェ島とグラン・カナリア島に同じデザインで1棟ずつ建設される予定になっています。

異なる敷地に建つ2つのビルが同じデザインであることは、運営やメンテナンスが容易であるため、より経済的に持続可能であることを意味しています。エネルギー効率や外的要因への適応性が高く、あらゆる例外的な状況にも対応可能なESEは、年間を通して絶え間なく市民にサービスを提供することができまります。ESEは、その建設の革新性、エネルギー効率、ユニークな建築、生態学的再生への注力、運営の安全性、警備隊やその他の緊急チームへのアクセシビリティ、そして極めて強いストレスにさらされる労働者の健康への配慮において、際立った存在となることでしょう。

カナリア諸島の治安を向上させる最強警備システム

気候変動が激しくなり、自然災害の被害が拡大している中で、我々の生活は、パンデミックやサイバー攻撃、破壊工作、テロなどの脅威に直面しています。その中で最も重要なことは、公共の安全を保証し、潜在的なリスクを防止するために、適切なインフラを整備することです。2008年以降、欧州連合は、エネルギー、通信、産業、輸送設備など、「重要インフラ」と呼ばれるものの整備に力を注いでいます。欧州が機能するためには、これらのインフラの運用は不可欠であり、その脆弱性はEU加盟国すべてに影響を及ぼす国際的な問題なのです。

3D image of the future ESE Tenerife. Image© Fernando Menis

一方、7億人以上(世界総人口の11%)が住む世界の島嶼地域は、気候変動に対してより脆弱であるため、あらゆる状況に適応し、来るべき災害にも対応できるレジリエントで耐久性のあるインフラが必要とされています。カナリア諸島は、海面上昇、火山噴火、サハラ砂漠のヘイズなどの異常気象、カリブ海を離れてカーボベルデ、カナリア諸島、マデイラ付近で発生するハリケーンの影響を強く受けています。また、スペイン領とはいえ、イベリア半島から2,000kmも離れているため、その対策も必要です。同時に、市民に影響を与えるサービス全般の組織化では、世界で最も進んだ島嶼地域の一つでもあります。

ESE Gran Canaria_General view©Fernando Menis

COVID19の大流行、ロシアのウクライナ戦争、サイバー攻撃、異常気象の増加といった最近の出来事を踏まえ、カナリア諸島政府は、公共の安全、リスク予防、緊急事態の管理という観点から、2021年に、群島最大の島、テネリフェ島とグラン・カナリア島にそれぞれ1つずつ、合計約8000万ユーロを投資して2つの重要業務棟の設計に関する公開入札を呼びかけ、さらに一歩踏み込んだ取り組みを行いました。

ESEビルは、地震やその他の極端な現象に耐えられるよう建設され、公共安全上の事故が発生した場合に、対応やサービスを集中させるための充分な安全性を備えた建物となります。24時間365日稼働するESEビルには、サイバー保護を保証する2つの独立したデータセンターも含まれる予定です。スペインの建築家フェルナンド・メニスが、緊急事態やセキュリティに関連するさまざまな分野の専門家チームを率いて提案した作品が公募を勝ち抜き、採用されることになりました。2つのESEビルの建設は、2023年に開始される予定です。

Model of the future ESE Tenerife, designed by architect Fernando Menis. Image © Fernando Menis

Model of the future ESE Gran Canaria, designed by architect Fernando Menis. Image©Fernando Menis

街と人に優しいビル

ESEビルは、フェルナンド・メニスが手がけた他の建築物と同様、環境との一体化を特に重視し、その再活性化を図るとともに、それらを収容する都市・社会基盤の再生に貢献することを目指しています。防波堤をイメージした外周壁には、この地域特有の植栽が施されています。アクセスエリアの大きな歩道や、区画の内側や端に配置された樹木は、建物を都市のコンテクストに統合し、空間に繋がりを生んでいます。重厚な表情の雄大なスケールでもって、都市のランドマークとなることは間違いないでしょう。

The interior garden of the ESEs, designed to support the well-being of workers, will give the sensation of immersion in nature, thanks to its great biodiversity. Image © Fernando Menis

ビルで働く人々のウェルビーイングのために設計された中庭は、ブロメリア、ローズマリー、ジャスミン、低木の針葉樹、オレンジ、シダなどのアロマティックゾーン、色とりどりの花が咲くカラフルゾーン、低木のゾーン、垂直に展開する庭園のゾーンなど、様々なエリアに分かれており、自然に包まれた感覚を与えます。さらに、中庭には、交流、憩い、レジャー、スポーツのためのスペースが設けられます。

従業員が普段の仕事から受けるストレスを軽減する場となるべく、休憩スペースは、建物内と中庭に分散して配置される。建物には幅2.80m、長さ300mの縦長の庭園があり、上階の3つのフロアに光と自然換気を提供しています。このスロープは屋外のメインコートヤードとつながっているため、ウォーキングやランニングなどのエクササイズに利用することができます。

3D image of a work room in the future ESEs. Image©Fernando Menis

ガラス張りのファサードには低放射複層ガラスを使用し、ソーラーコントロールシステムにより、ガラスの色調を変えることなく、日射量を80%以上低減させます。また、時速280km以上の風にも強く、固いものからの衝撃にも耐えることができます。水平スラットシステムは、オフィスデスクに座った状態でも、立った状態でも外の景色を見ることができるように配置されている。自然採光と室内温熱の制御システムで建物内は常時監視され、常に快適性が保証されています。

The future ESEs will have a bioclimatic design to produce natural ventilation and optimal air quality, while the air conditioning installation will allow energy savings and maximize comfort. Image © Fernando Menis

内部構造は、エントランスにメインスペースと、その側面にサブスペースを配置することで、シンプルかつ直線的なものとしている。内側に通路を設け、建物前面部分を開放することで、柔軟性のある空間が創出されています。用途に応じて容易に空間を細分化することが可能で、常に多様なニーズに対応できる適応性を備えています。

機能性と操作性

どちらのビルも、セキュリティ、冗長性(予備機能)、ロバスト(頑健)性、将来のニーズへの適応性、操作性、エネルギー効率を重視する同じコンセプトのもとに設計された、350屬離如璽申萢センターが配備されています。他の多くのデータセンターと異なる特徴は、サーバーから発生する熱を水の再加熱に使用して、熱の放出を抑えるエネルギー回収システムを採用している点です。

3D of the Data Processing Center in one of the two future ESEs. Image © Fernando Menis

主にヘリポートとして機能する屋根は、地元の火山石「ピコン」で仕上げることにより、熱慣性を高めて、建物のエネルギー効率の向上に貢献しています。さらに、多孔質で高い吸音性を持つピコンの特性により、ヘリポートからの騒音も軽減させています。

フェルナンド・メニスについて

1951年、スペイン領テネリフェ島生まれの建築家。40年以上のプロフェッショナルなキャリアにおいて、多様なタイプとスケールの作品を世に送り出しています。中には、長期的な研究プロジェクトも含まれています。コンサートホールやオーディトリアムの設計のエキスパートであり、CKKヨルダンキ・コンサートホール(2015年、ポーランド)の革新的な可変音響システムの考案で、賞を受賞しています。単独または協業で完成させたプロジェクトには、ラス・チュンベラスの聖なる贖罪教会(2022年)、エル・タンケ カルチャースペース パブリックガーデン(2022年)、ポーランドのCKK「ヨルダンキ」コンサート&コンベンションホール(2015年)、スイスのプラザ・ビュルヘン(2015年)、インシュラー陸上スタジアム(2007年)、マグマ・アルテ&コングレッソ(2007年)、ベルリン・スプレー川のフローティングプール(2004年)、テネリフェ島のカナダ政府議長府(2000年)などがあります。国際的な賞を数多く受賞しており、作品は世界中の美術館で展示されています。彼のプロジェクト「Iglesia del Santísimo Redentor」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネント・コレクションに含まれています。


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