

ADF(NPO青山デザインフォーラム)は、「ADFアートギャラリープロジェクト」の第38回目のプロジェクトとして、ニコラ・マニエロによる個展「アーバン・ポートレート」を2026年3月2日(月)から3月13日(金)まで、表参道のGARDE Galleryで開催いたします。
本展では、都市を建築やインフラ、象徴的なランドマークを通して捉えるのではなく、公共空間に埋め込まれた人間の存在へと視線を移すことで探究します。表情や身振り、そして一瞬の邂逅を通して、高密度な都市生活が生み出す心理的・感情的な状態が浮かび上がります。


展示されるポートレートは、街路や駅、移行的な空間における偶然の出会いから生まれたものです。注意がふと逸れ、防御が緩み、内面が一瞬だけ表出する──そのような瞬間を捉えています。これらは個人のアイデンティティを規定したり物語を語ったりするのではなく、断片として提示されます。部分的で未解決、そして開かれた像として、現代都市に特徴的な不安定さや曖昧さを映し出します。


あえて明示的な文脈情報を排することで、従来のドキュメンタリー的衝動から距離を取り、周囲の都市はほとんど不可視のまま、光や質感、空気感の痕跡へと還元されます。そして都市の圧力が蓄積する場としての「顔」へ焦点を当てることで、疲労、孤独、強靭さ、脆さ、そして静かな抵抗が一つのフレームの中に共存します。それぞれのイメージは、内と外、私的と公的のあいだの閾(しきい)となっています。


ポートレートは未計画の状況から立ち上がり、撮影者の身体的な存在と公共空間の予測不可能な力学によって形づくられます。この方法は、ストリート写真に内在する倫理的緊張を認めつつ、支配よりも不確実性を、所有よりも存在を強調しています。

それらを集合的に見ると、ポートレートは都市そのものの複合的な像を形づくっていることに気づきます。そこに一貫した物語や直線的なシークエンスはなく、姿勢や視線、感情のトーンを通して互いに響き合う瞬間の星座が広がります。反復と差異がリズムを生み、個々の物語ではなく共有された状態が立ち現れます。都市は、そこを行き交う人々によって絶えず生成される関係性の可変的な場として形づくられているのです。


スピードや消費、視覚的過負荷に支配された状況のなかで、「アーバン・ポートレート」は立ち止まり、他者の存在と向き合い、時間をかけて観察することを提案します。都市はモニュメントやスカイラインによってではなく、日々そこに生まれる儚く移ろいやすい、しかし深く人間的な瞬間によって形づくられていることを示唆しています。






ニコラ・マニエロ

東京を拠点とするイタリア人建築家・写真家。ヴェネツィア建築大学(IUAV)で建築を学び、空間・知覚・日常生活の関係性に早くから関心を抱きました。2010年よりKengo Kuma & Associatesに所属し、現在はパートナーとしてヨーロッパ、中東、アジアにおける文化施設、インフラ、都市プロジェクトに携わっています。
彼の建築実践は、コンテクスト、素材性、公共空間に対する強い感受性に特徴づけられます。ランドスケープや社会的利用、集合的体験のあいだを媒介する建築を探究する国際プロジェクトに従事してきました。その背景は、写真を独立した分野ではなく建築的思考の延長として捉える彼の姿勢に深く影響を与えています。
建築家としての活動と並行し、マニエロは現代都市を主題とする独立した写真研究を展開しています。作品では人間的スケールでの都市生活を探り、周縁的な状況や日常の身振り、計画的な表象からこぼれ落ちる瞬間に着目しています。建築を対象物として描くのではなく、構築された環境がいかに住まれ、知覚され、感情的に経験されるかを探究しています。
ADFアートギャラリープロジェクト ニコラ・マニエロ個展「アーバン・ポートレート」開催概要
会期: 2026年3月2日(月)〜3月13日(金)
時間: 11:00〜18:00
会場: GARDE Gallery
休廊日: 日・祝日
販売予定URL: https://www.art-adf.jp/
