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ADF DESIGN AWARD 2026 審査員コメント総まとめ

青山デザインフォーラム(ADF)主催の「ADF デザインアワード 2026」の審査結果が2026年3月に発表されました。最優秀賞および優秀賞に選ばれた各作品には、人間中心の設計思想、自然との関係性、そして空間体験の質を重視した建築的アプローチが共通して見られます。本記事では、受賞作品に対する審査員コメントを整理し、その特徴を紹介します。


最優秀賞:小池 啓介(Thirdparty / K2YT)へのコメント

Suzy Annetta / Founder and Publisher of Design Anthology

@ Gavin Green

今年のADFアワードの審査員として、都城こみぞ眼科は患者の体験に対して極めて思慮深く応答した建築だと感じた。待ち時間を単なる空白の時間として扱うのではなく、空間と自然に触れる意味のある回復的な体験へと変換している点が印象的である。分節された屋根形状は、多様なヴォリュームを生み出し、開放性と親密さのバランスを実現している。また、機能ゾーンの間に織り込まれた庭がやわらかな自然光を室内へと導き、内外の境界を曖昧にしている。この建物は医療施設というよりも、むしろ地域の公園のような雰囲気を感じさせる。自己主張のための建築ではなく、共感にもとづく建築であり、患者、スタッフ、そして訪れる人々をやさしく支える空間となっている。

Mark Olthoff / Principal, Owner of OLSON KUNDIG

素材やランドスケープの扱い、そしてディテールの完成度によって、内部空間と自然環境が見事に融合した建築となっている点は印象的である。ただし、家具における触覚的な体験や親密なスケールの部分にも、建築と同じレベルの細やかな配慮が払われていれば、より良かったと感じる。現状では、建築そのものが持つ完成度に比べて、利用者にとっての体験がやや総合的(ホリスティック)とは言い難く、本来持ち得たはずの豊かさにまだ到達していないように思われる。



吉川 勉/ Zaha Hadid Architects

建築家として、私たちは空間の質を通して思考を表現する。今回のコンペティションの評価には多くの基準があるが、この提案は「それはどのように感じられるのか?」というシンプルな問いによって際立っている。出発点は、屋根が重なり合うシンプルなフィジカルモデルである。どこか日本の寺院を思わせるが、完全にそれと同じではない。確かに、ガラスの建具の納まりは一つの課題であり、また将来的に日本の気候の中でこの建築を維持していくことも課題となるだろう。しかし、このプロジェクトはそうした困難に対して後退することはなかった。空中に浮かぶ箱状の空間というこの瞬間は、建築の新たなスタイルを生み出す契機となり得る。そこはメザニンへと発展する可能性もあるし、あるいは構造的な解決によって本当に浮遊する箱となるかもしれない。さらに、半屋外的な空間として相互に絡み合う構成へと展開する可能性も考えられる。賞に値する提案である。


優秀賞:Jeravej Hongsakul (IDIN Architects)へのコメント
M.L. Varudh Varavarn/ Founder, Principal Architect of Vin Varavarn Architects

Harudot Caféは、ランドスケープ、空間のストーリーテリング、そして建築的な抑制を思慮深く統合することで際立っている。外観は意図的にシンプルに抑えられている一方で、内部には、訪問者が建物の中を進むにつれて徐々に展開していく豊かな空間の連なりが現れる。形態、光、囲われ方の微妙な変化が発見の瞬間を生み出し、小さなプログラムを魅力的な空間体験の旅へと変えている。植栽は単なる装飾ではなく、空間を生み出す能動的な要素として機能している。カフェを単にコーヒーを飲む場所としてではなく、体験的な目的地として捉え直すことで、このプロジェクトはカフェデザインに静かでありながら意味のある革新をもたらし、訪れる人々に記憶に残る没入的な環境を提供している。


Kelly Tan/ Acting Director of Industry, DesignSingapore Council

Nana Coffee Roasters による「Harudot」は、ブランドのストーリーテリングを機能的でありながら美しい建築に見事に統合しており、最優秀賞に値するプロジェクトである。建物の物理的な形態からグラフィックに至るまで細部にわたる綿密な配慮によって、一貫性のあるユーザー体験が生み出されており、それは場所のコンテクストに深く根ざしたものとなっている。コーヒーかす、米、葉といった素材を取り入れた独創的な素材構成は、ブランドのアイデンティティと地域の文化や環境の双方を尊重するものである。また、美的な側面にとどまらず、自然光や自然換気を活用することでエネルギー消費を抑えるなど、建物は持続可能性にも配慮している。最終的にこのプロジェクトは、実用性と洗練された現代的デザイン言語を見事に両立させた、力強い建築として評価できる。




IDr Ooi Boon Seong/ Chief Executive Director of OD&A

Harudotは、コンセプトと空間構成が緊密に結びついた、明快かつ丁寧なホスピタリティデザインを提示している。「新たな始まり」という概念は、計画の中心に据えられたバオバブの木の統合によって、直接的かつ物理的に表現されている。切妻屋根を分節することで、光や風、そして自然の成長が無理なく空間体験を形成している点も評価できる。外部のダークな表現と、内部の温かみのある木質空間との対比は、ブランドアイデンティティを控えめかつ的確に支えている。本プロジェクトの特筆すべき点は、物語性、人間的スケール、そして実践的な実現性のバランスにある。

優秀賞:Jannis Renner(ATELIER BRÜCKNER)へのコメント

Seuk Hoon Kim/ Executive Director of Korean Society of Interior Architects/Designers,
Founder, Creative Director of Studio Eccentric

大阪・関西万博2025のウズベキスタン館は、文化的アイデンティティを明快な建築言語へと翻訳した、洗練され思慮深いパビリオンである。地に根ざした粘土とレンガの基壇と、軽やかな木造パーゴラとの対比は、静けさを保ちながらも表現力のある空間秩序を生み出している。また、モジュール化された構成は、持続可能性への確かな取り組みを示している。このプロジェクトは、構造、素材、そして空間の物語性を一体化し、来場者の体験を一つの連続した旅として構成している点で際立っている。地域性への深い根ざし方と、現代的でグローバルな表現を見事に両立させている。



Marco Bevolo/ Adjunct Professor of Design Futures World University of Design, Founder of Marco Bevolo Consulting

ストーリーテリングは、このパビリオンの体験の中心にあり、舞台美術(シノグラフィー)やメディアの概念を建築のDNAとして取り込んでいる。ウズベキスタンは旧ソ連の共和国で、1991年に独立した国である。複雑さと矛盾を併せ持つ豊かな背景を持つこの国は、万博パビリオンの設計者にとって明確な挑戦を提示する存在でもある。本コンセプトはウズベキスタンの地勢的(ジオマンティック)な現実に立ち返り、その地表の形状やランドスケープの色彩から直接的なインスピレーションを得ている。伝統的な職人技は、地域の素材を人の手による表現へと変換し、古来の技術と日本の規範や規制を組み合わせた形で実装されている。また、パッシブな気候戦略や将来的な公共用途への再利用の可能性は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実施が期待以上に進んでいる国としての持続可能性への志向とも一致している。暗めに設計された展示空間へは、控えめに設けられた入口からアクセスする。最終的にこのパビリオンは、歴史的・地理的、さらには地質学的とも言える認識に根ざした未来像を提示し、明日、そしてその先へと向かうビジョンを示している。



Maria Vittoria Capitanucci/ Milan Order of Architects

持続可能性の森として構想されたウズベキスタン館は、伝統的な構法や工芸を現代的に再解釈した建築である。地域固有の特性と国際的なデザイン言語が力強く対話し、文化と未来志向が融合する空間を創出している。

ADF DESIGN AWARD 2026 への総評
Heather Dubbeldam/ Principal of Dubbeldam Architecture + Design

ADFデザインアワードの審査員として参加し、思慮深く意欲的な多様な応募作品をレビューできたことを大変光栄に思う。選ばれたプロジェクトは、素材に対する知性、環境への責任、そして光・構造・形態を通して空間体験を丁寧に形づくろうとする強い姿勢を示していた。特に印象的だった作品の多くは、過度に形式的な表現に頼るのではなく、気候やランドスケープ、人の利用のあり方への理解から建築を導き出す、明快さと抑制のあるアプローチを示していた。受賞作品に共通して見られた大きな強みの一つは、自然環境への繊細な応答である。空間の慎重な配置や断面的な光の取り入れ方、そして自然素材の思慮深い使用によって、これらのプロジェクトは人のウェルビーイングを支え、場所へのより深い意識を育む環境を生み出している。このような作品は、建築を単なる「物」としてではなく、人が生き、経験するための枠組みとして捉える理解を示している。総じて受賞作品群は、現代建築が環境的・文化的条件に対して謙虚さと精度をもって応答しながら、その土地に深く根ざしつつも未来志向の空間を創出できることを示している。



Christina Yao/ China editor of Dezeen

今年のADF Grand PrizeおよびAwards of Excellenceでは、人間中心のデザインに根ざした一貫した建築的解釈が示された。自然や自然素材を取り入れることで、これらのプロジェクトは地域性(地域固有のアイデンティティ)と現代的な表現を巧みにバランスさせている。


Nicola Maniero/ Architect, Partner of Kengo Kuma and Associates

本コンペティションには非常に多くの応募があり、いくつかのプロジェクトはその質の高さで際立っていた。特に日本からの作品には、優れた設計の厳密さと空間への繊細な感性が見られた点が印象的である。また、小規模で親密な介入から、より複雑な建築プログラムに至るまで、アプローチやスケールの多様性も魅力的であった。このような多様性は全体の選考を豊かなものにする一方で、性質の大きく異なる作品同士を同じ基準で比較することが容易ではなく、評価プロセスをより難しいものにもした。そのため審査においては、単なる量的な比較ではなく、質的な基準に細心の注意を払うことが求められた。しかし総じて言えば、最終的な選考結果には十分な説得力があり、受賞作が審査の過程を通して浮かび上がった研究性、感性、そして建築的質の高さを明確に体現していることを、私は大変うれしく思っている。




ADF Design Award 2026
「ADF デザインアワード 2026」は、NPO法人青山デザインフォーラム(ADF)が主催する国際的なデザインアワードです。2026年3月に審査結果が発表され、グランプリには小池圭介氏(Thirdparty / K2YT)、優秀賞にはJeravej Hongsakul氏(IDIN Architects)およびJannis Renner氏(ATELIER BRÜCKNER)が選出されました。本アワードは総額30,000米ドルの賞金を有し、建築・デザイン分野で国際的に活躍する著名な審査員によって評価されます。受賞者は2026年4月21日より開催されるミラノサローネ期間中の授賞式に招待されるほか、ミラノ建築家協会によるMilano Politecnico Graduation Project Awardや、インテリアデザイン企業GARDEとの共同展示など、国際的な発信機会が提供されます。


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