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コルフ島エリミティスの海岸沿いの風景に広がる《Wound》を上空から捉えた様子。 © The Krank
The Krankがギリシャ・コルフ島でランドアート《Wound》を公開―土地に残る「傷」と、自然をケアする人々の営み
ギリシャ・アテネを拠点に活動するビジュアルアーティスト、The Krankが、コルフ島北東部のErimitis(エリミティス)で、一時的なランドアート《Wound》を制作しました。2026年9月26日・27日に一般公開された本作は、幅約7メートル、長さ約50メートルにわたる赤い「傷」と、その両側をつなぐ黒い「縫合」によって構成されています。かつて開発工事でブルドーザーが通過した場所を舞台に、自然環境への介入と、土地を守り、ケアする行為について問いかけました。
土地に残された痕跡を可視化する

作品の設置風景。The Krankが浜辺の石を使って布を固定しています。© The Krank
《Wound》の設置場所は、任意に選ばれたものではありません。作品は、2021年に以前の開発計画に伴う工事が行われ、ブルドーザーが通過した痕跡の上に制作されました。赤い傷は、すでに土地に刻まれていた人為的な介入を可視化するものです。
本作では、自然環境が象徴的に一つの身体へと置き換えられています。地表を切り開くような赤い布と、その両側をつなぎ留める黒い縫合。身体の傷として見慣れたイメージを風景のスケールへと拡張することで、自然環境の傷つきやすさを、私たち自身の身体感覚に重ねて伝えています。
黒い縫合に込められた、地域の人々によるケア
黒い縫合の制作と設置には、地域住民や保全活動を続けるSave Erimitisのメンバーが参加しました。縫い合わせる行為そのものが共同作業となり、作品は、この土地を長年守ってきた人々の営みとも結びついています。
縫合は傷を消し去るものでも、過去の損傷をなかったことにするものでもありません。傷をつなぎ留め、回復が可能になるための条件をつくります。その表現には、圧力にさらされる土地を守ろうとする人々の姿が重ねられています。
開発計画のその先にある、風景の未来

エリミティスの風景の中に設置された《Wound》の全景を上空から捉えた様子。© The Krank
Erimitisでは、2012年にギリシャの国有資産開発基金TAIPEDが公有地の開発手続きを開始し、翌年にはNCH Capitalによる提案が承認されました。その後の「Kassiopi Project」では、5つ星ホテル、最大40棟のヴィラ、57隻分の係留施設を備えたマリーナなどが計画されました。
一方、湿地や沿岸の生息環境を含む地域への影響が懸念され、住民や地域団体による保全活動や法的な対応が続きました。2021年には工事が始まったものの、当初の計画は実現に至りませんでした。
提供資料が引用する2026年9月10日付の「To Vima」の報道によると、当該土地はCalamos Investmentsに関連する投資グループの管理下にあるとみられ、同時点では包括的かつ拘束力のある新たなマスタープランは公表されていなかったといいます。
《Wound》は、こうした移行期にある土地の未来を見つめる作品でもあります。すでに傷ついた場所が回復することは許されるのでしょうか。それとも、再び傷が開かれるのでしょうか。開発の意味と、自然をそのまま残すことの価値を、風景のなかから問い直しています。
森・湿地・海がつながるErimitis
コルフ島北東端、AvlakiとAgios Stefanosの間に位置するErimitisには、地中海性の森林、3つの沿岸湿地、岩場の海岸、開発されていない7つの小さな入り江が共存しています。
提供資料によると、この地域では数百種の植物、数十種の鳥類、200種以上の海洋生物が記録され、沿岸の海底にはポシドニアの海草藻場が広がっています。湿地は、対岸のアルバニア沿岸や、保護地域であるブトリント国立公園ともつながる、広域的な生態系の一部を形成しています。
森林、湿地、海がほぼ連続した未開発の沿岸域に集まることが、Erimitisの自然環境を特徴づけています。
科学的な知見と芸術体験が出会う公開プログラム

エリミティスでの《Wound》の一般公開期間中、海岸沿いのガイドウォークに参加する来場者たち。© The Krank
一般公開の2日間には、Save Erimitisと科学分野のアドバイザーによるガイドウォークも実施されました。参加者は、地域の生態系や自然の特徴について解説を受けながら歩き、その終点で《Wound》に出会いました。
会場ではThe Krankが作品を紹介し、自然への介入やケアをめぐって来場者と対話しました。土地に関する科学的な知識と芸術体験を結びつけることで、見慣れた風景を別の視点から捉える機会が生まれました。
公開後は完全撤去し、素材は再利用へ

完全に撤去できるよう設計された素材を使用し、手作業で組み立てる設置工程の詳細。© The Krank
作品には布を使用し、設置には浜辺の石を活用しました。すべての素材を撤去できるよう制作され、公開終了後には完全に撤去されました。使用した素材は損なわれることなく回収され、今後の作品で再利用するために保管されています。
The Krankは、現地での制作について次のように振り返っています。
「太陽の下でも雨の中でも、早朝から月が昇るまでErimitisで制作しながら、私は小道を歩き、海からもこの場所に近づきました。風景は絶えず変化し、この土地を守り続けてきた地域の人々と日々接することで、わずか数日のうちに、この場所を深く知ることができました。今では、ここでの『開発』を、ありのままに保全すること以外のものとして想像することができません」
— The Krank(提供資料より和訳)
The Krankについて
The Krankは、ギリシャ・アテネを拠点とするビジュアルアーティストです。大規模なサイトスペシフィック・インスタレーション、ランドアート、公共空間での介入を中心に、風景、集合的記憶、現代社会の課題の関係を探究しています。実在する場所を、公共の対話と共同の思考が生まれる場へと変える活動を展開しています。
作品概要
作品名:Wound
アーティスト:The Krank
設置場所:ギリシャ・コルフ島 Erimitis
サイズ:約7 × 50メートル
素材:布
一般公開:2026年9月26日・27日
共催:Erimitis Plous/Save Erimitis
支援:Ionian Environment Foundation
公開後の状況:完全撤去。素材は今後の作品で再利用するために保管
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